Xperia(ソニーのスマホ及びタブレット)は、Z5の時代までは、最上位機種の一部では日本の技適認証を取得していた(但しタブレットは撤退済)。実際自分も香港版/中国版のXperia Z3 Table Compact (SGP621)を所有しているが、技適マークは表示される。但し、少なくともZ5 (2015年9月発表)までは、ドコモのプラチナバンドである800MHzバンド(LTEまたはW-CDMAのBand 6 or 19)に対応している機種はなかった。まあ、この800MHzというのは日本のドコモのみで使用されているバンドだから、頷ける気もする。
ところが、Xperia X performance (2016年2月発表)以降のソニー海外フラッグシップ機種は一切技適認証を取得しなくなった。一方で、ドコモのみで使用されている上述800MHzに対応するようになったのだ。具体的にはXperia X performanceシングルSIM版のF8131には、UMTS(W-CDMA)のバンド6及び19、LTEのバンド19に対応していることが、whitepaperから読める。デュアルSIM版のF8132も同様だ。但し、Z5までで技適が表示されていたのは、シングルSIM版のみで、デュアルSIM版は技適を取得しているものはなかった覚えだから、デュアルSIM版は元々技適を取得するつもりはなかったかもしれない。
その間に何があったのか?思い当たるのは、「電気通信事業法」及び「電波法」の改正(いずれも2016年5月21日施行)だ。前者はスマホの機能のうちBluetooth及びWifi、後者は携帯電話回線に関わる法律だ。この日を境に、海外機種(技適未取得)は、Bluetooth及びWifiは持ち込んでから90日以内、携帯電話回線は制限期間なくFCC認証/CEマークがあれば、接続が合法となった。つまり、殆どの海外からの訪日客(90日以内滞在)は、持ち込んだスマホが技適を取得していなくても、合法的にそのスマホを使用できるようになった。なので、ソニーは技適認証を取得するのをやめたのだろう。つまり、ソニーは海外フラッグシップスマホを世界中で日本のドコモでしか使われないバンドに対応させる一方で、日本の技適認証取得をやめた。なんとも皮肉な方針転換だと思う。
改めて思うに、中途半端な法改正だと思う。電気通信事業法の方も期間を区切らず、BluetoothやWi-fiが使用できれば、海外から輸入したスマホはFCC認証/CEマークがあれば合法端末となったはずだ。
総務省は、3大キャリアの寡占から脱却するために、MVNOの普及に力を入れている。ところが、現時点では皮肉なことに日本の最大スマホ製造販売企業であるソニーのXperiaに、SIMフリー版、つまり3大キャリア純正端末以外は存在しないのである(以前イオン等が扱うXperia J1 CompactというSIMフリー端末があったが…。)。Appleは高額とは言え、SIMフリーのiPhoneを販売しているのとは対照的だ。
身近にサポートを行う販売店がないMVNOは敷居が高いと感じる人は多いと思うが、そもそも魅力的な端末がないから乗り換えられないという人もいるはず。海外機種の輸入の敷居が下がれば、輸入端末はその一助となると思うのだが。ぜひ総務省には、考えてもらいたいものだ。そして、このまま放置すれば、日本のスマホ端末はガラパゴス化し、結局日系メーカーは衰退する気がしている。