これは名古屋市内の痔日帰り手術(私は痔主でした)を専門に行っている有名な医療機関でのこと。スタッフに「日帰り手術でも病室を使用するために入院となります。なお入院部屋は個室のために差額ベッド代が一律必要になります。」と説明を受けた。前者つまり日帰りでも入院になるということは妥当な話と思ったが、後者、つまり一律選択の余地なく差額ベッド代が発生するという話は腑に落ちなかった。そこで東海北陸厚生局(厚生労働省の出先機関)に電話で問い合わせてみた。事前に調べていたとおり、以下のことが確認できた。
差額ベッド代を請求できるのは、患者が差額ベッドを自由意志で希望した場合のみ。つまり、
- 個室(差額ベッド)しか空いていいないために、個室入院となり差額ベッド代を請求。
- 病状管理のため(例えば病状が重く目を離せない、感染症を予防するため他の患者と別にする必要がある)に個室(差額ベッド)が必要であり、差額ベッド代を請求。
はいずれも厚生局の通達違反である事がわかった。但し、差額ベッドに入院の同意書にサインをすれば同意してしまったと見なされてしまう。
そこで同意書提出前にこの医療機関に問い合わせ、相部屋を希望する電話をした。するとすぐさまそのスタッフは上記2、すなわち術後の出血管理のために個室が必要であるから個室入院となりますという回答。厚生局に問い合わて確認したが、それはおかしいのではと反論すると、「しばらくお待ちください」と返答し、慌てて医師のところに取るべき対応を聞きに行ったようだった。そして相部屋でOKと言うことになった。
この医療機関は他にも患者の同意を得ずに全額患者負担(つまり健康保険で落とせない)血液検査を実施したり、正直誠意に欠けるというか、コンプライアンスを守ろうとはしていない医療機関と写った。
患者が医療機関に対して言うのは正直勇気がいると思うが、そもそも厚生局の通達違反を堂々と行うような医療機関は、たとえ有名であろうと気をつけたほうが良いと言うのが病気の百貨店で医療機関にかかり慣れた私の意見だ。
(参考)
1)埼玉県の解説
2)厚生労働省の保医発0326第1号(平成26年3月26日)
以下の通り記載がある。
第3 保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める基準等(掲示事項等告示第3及び医薬品等告示 関係)
1 特別の療養環境の提供に係る基準に関する事項
(中略)
(6) 特別の療養環境(註:=差額ベッド代が発生しうる個室など)の提供は、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基 づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないこと。
(中略)
(8) 患者に特別療養環境室(註:=差額ベッド代が発生しうる個室など)に係る特別の料金を求めてはならない場合としては、具体的には以下の例が挙げられること。
(中略)
② 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
(例)
- 救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者
- 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者 ・集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者
- 後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)
- クロイツフェルト・ヤコブ病の患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整っ た個室への入室を特に希望した場合を除く。)
③ 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選 択によらない場合
(例)
- MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を 防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者
- (通達に例の記載はないが、差額ベッドしか空きがなく、希望せずに差額ベッドに入院した場合はここに該当するらしい。)